文書作成日:2024/04/30
従業員が不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりに取り組む動きが広がりつつあります。不妊治療と仕事の両立については、2021年2月に次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針が改正され、一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項として追加され、2021年4月より適用されています。以下では、先月、厚生労働省から公表された「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(以下、「調査」という)の結果から、企業の不妊治療への支援制度の導入状況を見ると同時に、関連する助成金制度についてとり上げます。
[1]不妊治療への支援制度
この調査は、「女性の活躍推進企業データベース」においてデータ公表を行っている企業を対象として、2023年7月から8月にかけて実施されたもので、回答があった従業員規模10人以上の企業1,859社(労働者アンケート調査については男女労働者2,000人)に行い、その調査結果を集計したものが公表されています。
調査結果によると、不妊治療のための制度がある企業は26.5%で、もっとも多く導入されている制度は、不妊治療に利用可能な休暇制度が47.8%、不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度(テレワークを含む)が19.4%、不妊治療に利用可能な通院や休息時間を認める制度が14.3%となりました。この不妊治療に利用可能な勤務時間や場所等の柔軟性を高める制度については、半日単位・時間単位の休暇制度がもっとも多く、テレワーク(在宅勤務)、短時間勤務、フレックスタイム制度と続いています。
[2]両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)
このような企業の取組を支援する助成金として、両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)が設けられています。これは、不妊治療と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を従業員に利用させた中小企業が対象となる助成金です。対象となる事業主の要件と支給額は以下の通りです。
[対象となる事業主]
次の1から6のいずれかまたは複数の制度を導入し、従業員に利用させた事業主です。
1.不妊治療のための休暇制度(多目的・特定目的とも可)
2.所定外労働制限制度
3.時差出勤制度
4.短時間勤務制度
5.フレックスタイム制度
6.テレワーク
[支給額]
A「環境整備、休暇の取得等」
最初の従業員が休暇制度・両立支援制度を合計5日(回)利用 30万円
B「長期休暇の加算」
Aを受給し、従業員が不妊治療休暇を20日以上連続して取得 30万円
※A・Bとも1事業主あたり1回限りの支給
申請にあたっては、企業トップが制度の利用促進についての方針を全従業員に周知し、社内ニーズの調査を行い、制度の利用の手続き等を就業規則等に定めて周知することが必要です。このほか、両立支援担当者の選任、不妊治療両立支援プランの策定も必要です。
厚生労働省のサイトには、事業主向けに「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」、本人、職場の上司、同僚向けに「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」が公開されています。今後、企業の支援制度を検討する際には、このようなマニュアル等も活用するとよいでしょう。
■参考リンク
厚生労働省「「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について」
厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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